実践と往還する教育制度 揺らぐ法制と現代的転換

  • 教育・心理

東洋大学 教職センター 教育学シリーズ 第1巻



揺らぐ時代の教育に、不動の学理を。
「学理と実践の往還」から描き出す、教育制度の新たな地平。
教育とは、単なる技術的支援や制度運営ではない。それは人間が世界と向き合い、他者と共に生きるための根源的な営みである。
急速な技術革新や社会構造の変容に直面する今日、私たちは「学ぶとは何か」「評価は何を価値づけるのか」という根源的な問いに改めて立ち返る必要がある。
本書は、東洋大学教職センターが推進する「学理と実践の往還」を具現化するシリーズの第1巻である。井上円了の教育哲学を現代的に継承し、教育の歴史的連続性と現代の変容を鋭く見据えた5人の研究者が集結。教育制度の多層的な真実に迫る。

* メガイベントが教育現場に沈殿させた「負のレガシー」の構造(角谷昌則)
* 「親の教育権」と公共性の狭間における倫理的判断(葛西耕助)
* 学びのセーフティネットから「主体的選択」の場へ変容する通信制高校(斎藤里美)
* 情報教育の歴史から見据え直す、生成AI時代の人間と技術(山口晶子)
* 学校・大学・地域を繋ぐ「キャリア教育」の具体的基盤(藤田駿介)

実践のエビデンスとナラティブを往還し、教員の専門性を共同の営為として再定義する。「よい実践」を単発の成功で終わらせないために、教育研究者・学生必読の一冊。
  • 東洋大学 教職センター(とうようだいがくきょういくせんたー)(監修者)
  • 角谷昌則(かくたにまさのり)(編著者)
  • 葛西耕介(かさいこうすけ)(編著者)
  • 斎藤里美(さいとうさとみ)(著者)
  • 山口晶子(やまぐちあきこ)(著者)
  • 藤田駿介(ふじたしゅんすけ)(著者)
  • 価格(税込)
    2,750円
    体裁
    A5並製 168頁
    ISBN
    978-4-86624-132-6
    発刊日
    2026/04/03

    目次

    序・「学理と実践の往還」に寄せて(後藤顕一)
    
    1.歪曲するレガシー(角谷昌則)
     1.はじめに
      本稿の目的:教育に残されるレガシーとは
      問題の所在:教育の従属
      本稿の主要な問い:理念と構造的帰結のねじれ
      分析の枠組み: 二つの期間と統治の変容
      本稿の特質と構成
     2.機能主義的平等の強制と構造的問題の形成(1964年〜1970年)
      東京オリンピック(1964年):空間・身体を通した規律化
      大阪万国博覧会(1970年):未来観の提示と国民の動員
      教育へ入り込む規格化
      機能主義的平等と問題の構造化
      教育システムの機能障害と構造転換の要請
     3.ネオリベラルな規律化と「負債」の構造化(2020年〜2025年)
      東京オリンピック・パラリンピック(2020年):「多様性」と相互理解
      大阪・関西万国博覧会(2025年):「いのち」の強調と未来社会の実験場
      教育への要請の変容:産業への従属から「自己変革の強制」へ
      「個別最適な学び」と「協働的な学び」による新たな規律化
      開かれた学習環境への転換と非直線的な人材供給
      希望から「不安」へ
     4. 「規格化」から「自律化」への転回とその逆説
      第1期の理念と現実の歪み:機会均等と垂直的格差の固定化
      第2期の理念と現実の歪み:多様性の強制と水平的格差の出現
      結語:レガシーの基層へ
    
    2.親の教育権にかかわる判例の展開(葛西耕介)
     はじめに―本稿の関心と対象
      本稿の関心
      対象となる判例の限定
      親の教育権とそれにかかわる判例の類型化
     1.学校選択権
      特別支援学校ではなく普通学校に就学する権利
      統廃合にかかわらず従来の学校に就学する権利
      就学校の変更・区域外就学によって特定の学校に就学する権利
      外国籍生徒の親の就学を選択する権利
     2.拒否権
      就学・進級・入級の拒否
      教育内容の拒否
      小括
     3.要求権
      教育内容の変更要求
      教育要求と名誉棄損・侮辱との限界
     4.教育情報請求権
     おわりに―本稿の示唆
    
    3.通信制高校をめぐる制度的変遷(斎藤里美)
     1.はじめに
     2.通信制高校(課程)拡大の様相
     3.通信制高校に関する法制度の変遷および近年の動向
      通信制高校に関する法制度の変遷
      創設期(1948年〜1960年代)
      拡充期(1970年代~1990年代)
      急増期(2000年代~2016年頃)
      質の確保に向けた転換期(2016年~現在)
     4.通信制高校の制度改革に関わる近年の動向および論点
     5.今後の課題
      私立通信制高校にみる高校教育の市場化と格差
      通信制高校の生徒層・卒業生層の変容
    
    4.中等教育における情報教育の制度化の歴史的展開(山口晶子)
     1.はじめに
     2.情報教育の萌芽期(1985~1989年)
     3.インターネット普及前夜と制度対応(1989~1998年)
     4.SNS前史と情報モラルの制度化(1998〜2008年)
     5.スマートフォン時代と情報活用能力の基盤化(2008〜2017年)
     6.GIGAスクール構想と制度整備:運用上の課題
     7.まとめと展望
    
    5.職場体験活動に際した地域連携システムの在り方(藤田駿介)
     1.中学校・職場体験活動の現状と課題
      キャリア教育の現状
      職場体験活動の位置づけと課題
     2.職業に関する体験活動の在り方はどのように示されてきたか
      職業に関する体験活動のルーツ
      キャリア教育施策としての職場体験活動の展開
     3.機会保障に向けた組織間媒介組織への期待
      事業所確保のための方策と課題
      学校・地域間の関係と媒介する存在の重要性
     4.地方における持続可能な事業所連携システム
      教育委員会の役割~新潟県佐渡市の事例~
      媒介組織としての商工会議所の可能性
      商工会議所の役割~愛知県瀬戸市の事例~
     5.まとめ
      職場体験活動に際した事業所確保に向けたシステム構築の必要性
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    著者紹介

    東洋大学 教職センター(とうようだいがくきょういくせんたー)
    2017年7月、東洋大学の教員養成の改善・充実を図る全学統括組織として設置。
    東洋大学の前身である哲学館より続く教員養成の伝統を継承しつつ、本学教職教育の指導体制の整備と教育の質的水準の向上を担う。また地域の教育機関や全国の卒業生等とも緊密に連携しながら、複雑化する教育現場で「学び続ける教師」の基礎力を備えた人材を育成し、現代の教員養成に資することを目指す。
    角谷昌則(かくたにまさのり)
    東洋大学生命科学部教授
    ロンドン大学 Institute of Education 博士課程修了・Ph.D.(比較教育学)
    主な著作:
    竹田敏彦・中島正明・角谷昌則編『道徳科を要とする道徳教育の理論と実践』(ナカニシヤ出版、2019)
    竹田敏彦編『教育課程(カリキュラム)編成はこうすればよい―社会に開かれた教育課程の実現』(ミネルヴァ書房、2022、第15章を担当)
    「明治十〜二十年代のドイツ国家学に基づく教育観の受容―哲学館と「護国愛理」への視点として」『井上円了センター年報』第 32号(東洋大学井上円了哲学センター、2023)
    葛西耕介(かさいこうすけ)
    東洋大学文学部准教授
    東京大学大学院 教育学研究科 博士課程修了・博士(教育学)
    主な著作:
    『学校運営と父母参加―対抗する《公共性》と学説の展開』(東京大学出版会、2023)
    斎藤里美(さいとうさとみ)
    東洋大学文学部教授
    一橋大学大学院 社会学研究科 博士後期課程退学・文学修士
    主な著作:
    「エンハンスメントの汎用化は公教育に何をもたらすか」『教育学年報13情報技術・AIと教育』(世織書房、2022)
    「〈はたらく〉ことから教育目標を考える―能力主義から社会的包摂へ」教育目標・評価学会編『〈つながる・はたらく・おさめる〉の教育学―社会変動と教育目標』(日本標準、2021)
    「人工知能とエンハンスメントの時代における「学ぶ意味」と「学力」 ―「人工知能と人間社会に関する懇談会」諸資料の批判的検討を通して」 『教育学研究』第84巻第4号(日本教育学会、2017)
    山口晶子(やまぐちあきこ)
    東洋大学健康スポーツ科学部非常勤講師
    上智大学大学院 総合人間科学研究科教育学専攻 博士後期課程単位取得満期退学・修士(教育学)
    主な著作:
    「子どものインターネット利用の実態と生徒指導上の課題」『The Basis 武蔵野大学教養教育リサーチセンター紀要』第15号(武蔵野大学教養教育リサーチセンター、2025)
    「現代社会における教師の役割の変容と自己研鑽の課題」『専修大学教職教育研究』第5号(専修大学教職課程協議会、2025)
    嶺井正也・森田司郎・福山文子編『共に創り出す公教育へ―社会知性を身につけた教師として 第2版』(八千代出版、2025、第2・3章を担当)
    岩田康之編『教育実習の日本的構造―東アジア諸地域との比較から』(学文社、2021、第6章を担当)
    藤田駿介(ふじたしゅんすけ)
    流通経済大学教育学習支援センター専任所員・経済学部専任講師
    筑波大学大学院 教育学学位プログラム博士後期課程在学中・修士(教育学)
    主な著作:
    「ドイツの移民向け準備クラス在籍者に対するキャリア形成支援の特質―既存支援に対する職業に関わる体験的学習の位置づけと影響に着目して」『キャリア教育研究』第44巻第1号(日本キャリア教育学会、2025)

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